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ERPパッケージの特徴や機能を理解しつつ、BPRを推進するパッケージ導入を前提にしたBPRを実施する場合、パッケージの機能を学習したうえでカスタマイズ方針を決めることは重要である。 上記@のようにいくら革新的なBPRを実施しても、いざERPを導入して情報システムとして実現しようとした段階で両者の禿離が激しいと、カスタマイズ不能になってしまう。
このような事態を避けるために、パッケージの機能を理解しつつ改革案を検討するという方法が意味を持つ。 しかし、ここにも落とし穴がある。

「パッケージ導入なのだから、最初にパッケージの機能を知り、それから業務をどう変えるかを考えればよい」という導入方法を、パッケージ・ベンダーは推奨している。 しかし、この方法はパッケージ・ベンダーと契約を締結した後の作業工程について言っているのであり、契約前にユーザが何をしなければならないかは言っていない点に注意しなければならない。
最も危険なことは、この方法を単純に受け止めてしまい、経営環境の確認、自社の業務の全体像に対するコンセンサスの確立、新しいビジネス・システムの検討、システム化計画の立案なしにパッケージの機能の学習を始めてしまうことである。 その時の問題点は、SEやエンドユーザが改革案を検討するとき、ERPパッケージの機能を判断基準にしてしまうことであり、その結果として、パッケージに引きずられて業務を変えてしまったという結果になりがちなことである。
認知科学者Nは、「日常人間が行う判断はその場の状況が与える『制約』とその状況に近い『メンタル・モデル』を使用している」と指摘している。 Gは、並列、直列の回路における電流の流れを説明する時、説明者が利用するメンタル・モデルが説明内容にどのような影響を与えるかを実験によって調べた。
あるグループには「人の流れ」を、別のグループには「水の流れ」を「類比モデル」として使い説明させたところ、説明内容は使用するモデルの影響を受けて大幅に異なるものになった。 この実験の結果は、利用するメンタル・モデルが人間の判断に影響を与えているということを示している。
ERPパッケージの開発者も全体の統合を達成するために、前提となるメンタル・モデルを持っている。 ERPパッケージの機能を学習したつもりでも、メンタル・モデルの影響を受ける最初にパッケージを学習し、その後でビジネス・モデルを描くとそれはパッケージの影響を強く受けたものにならざるを得ない。
ERPの導入に当たって、次のようなメンタル・モデルの影響を考慮すべきである。 最初にシステム化計画を立案した場合最初に全社システムのコンセプトを固め、その具体的な方法としてシステム化計画を立案した場合、プロジェクト・メンバーは新システムに関するメンタル・モデルを持つことになる。

そして、すでに確立された新システムのメンタル・モデルとパッケージの提供するモデルを比較することにより、カスタマイズの方針を検討することができる。 この場合の「類比モデル」はシステム化計画であり、比較する相手は「パッケージ」である。
最初にパッケージの機能の調査を始めた場合システム化計画の立案を行わず、パッケージの機能の調査を先に行った場合、システムエンジニアは、パッケージ機能を新システムのメンタル・モデルとして確立してしまう。 その後に、業務をどうしたらよいか検討する場合、判断基準となるメンタル・モデルは「パッケージ」になってしまう。
この場合は、「類比モデル」が「パッケージ」であり、比較する対象は「現行業務」となる。 その結果できあがるシステムは、「パッケージ」のオリジナル機能に近いものとなる。
ERPパッケージを導入した後にBPRを実施するこの方法は、ERPパッケージを元にしてどうBPRを実現したらよいか想像がつかない場合、とにかく現行システムと同じことができる状態にカスタマイズし、パッケージに慣れてきてから本格的にBPRを行おうという方法である。 この方法は改革が終了するまでに時間がかかることと、現行システムに合わせて導入を終わった時点で本格的なBPRの作業を実施する元気がなくなる危険性があることである。
ERPパッケージを導入する際にも、従来のシステム開発と同様に、機能別にシステムの段階的導入を行うという傾向がある。 最近、導入の手始めとしてまず会計システムからというプロジェクトの話を聞く。
このような導入方法を採用する理由は、翌年の会計年度が変わる時期に合わせて、ERPの会計システムをカットオーバーしたいということのようである。 導入要員の手配や予算の関係でこのような段階的導入方法を採用せざるを得ない場合もある。
しかしこのアプローチは必ずしもERPパッケージの特徴を生かした導入方法とはいえない。 機能別に開発され、他システムと順次連結しながら全社システムとして成長してきた従来のシステムと、最初から統合システムとして設計されたERPパッケージでは設計思想が異なっていることに注意しなければならない。
従来型の機能別に設計されたシステムでは、閉じたシステムとして開発されたため、データベース、ファイルの重複は当たり前で、他システムとはインターフェースを調整して辻棲を合わせていた。 しかし、統合データベースというインフラの上に構築されたERPパッケージでは各システムで行われた登録・変更処理の結果は、その結果をリアルタイムに全システムから見ることができる。
このようにERPパッケージでは、「システムの統合性」が最も重要な要素である。 そのため、導入に当たっては、各システム間の整合性を保ちながら「統合システム」として完成させる必要がある。
したがって、ERPパッケージの開発思想である「システムの統合性」を生かすためには、全社システムとしての統一したシステム全体の計画を立案した後、同時並行的に導入する方法を採用するのが理論的にはベストである。 しかし、実際にはパッケージに盛り込まれた経営管理論や業務の方法を十分に理解しているSEやコンサルタントの数が少ないので、段階的に導入せざるを得ない場合が多い。
その時も、システム計画の中で描かれた概念的なデータ・モデルを崩さないよう注意すべきである。 たとえば、受注し、出荷した伝票は請求書を発行し、売掛金データとして会計モジュールに転送される。

この売掛金に対する入金、消しこみは営業管理部署が担当したり、経理が担当したりで、地方や本店ではまちまちであるケースが多い。 ERPパッケージでも請求書発行機能が会計モジュールと販売管理モジュールの両方に備わっていたり、どちらか一方にしか備わっていないケースがある。
請求一つとっても請求書がその都度発行される必要性があったり、締め日ごとにまとめて発行される機能が必要だったり、一度打ち出したのに二度目の再発行が必要とされたり営業管理部門と経理部門では要望も異なる。 販売管理モジュールを担当したコンサルティング企業、導入業者と会計モジュールを担当したコンサルティング企業、導入業者が異なる場合はやはりプロジェクト管理チームが積極的に介入しなければならない。
安易な段階的導入は厳禁である。

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